2011年5月9日月曜日

"BROOKLYN CHAMPION"

"BROOKLYN CHAMPION"
ステンシルTシャツ
新作の紹介です。


 1600年代から、1800年代まで、雄牛と戦う見せ物の為だけにイギリスで生まれBULLDOG。
残酷な見せ物を禁止する法律によって、愛玩犬として飼われるようになり、現在でも知られる、足の短い、頬の垂れた姿になっていったようです。


 アメリカに渡ったBULLDOGは、本来の姿(足が長く、大型で、気性が荒い)で番犬として飼われる事が多いようです。


 50年代の終わり頃、BROOKLYNの夕暮れ時、路地裏を一人の少年が歩いていた。グリースヘアにブルージーンズ、コットンシャツの袖をまくり上げ、そこにタバコのパッケージをたくし込んでいた。
 仲間とのばか騒ぎに飽きて、家に帰る途中、薄暗い路地を曲がると、そこに血を流した大きな犬が横たわっていた。誰かが(この街か、隣街のギャングだろう)走っている車から放り出したのか、動く事も出来ず、首だけを起こしてこちらを睨みつけている。


 普段は、ギャングを気取って仲間とプロスペクトパークにたむろし、黒い錆び止め塗りのフォードを乗り回しては喧嘩に明け暮れる彼だったが、その、こちらを睨みつける目を見ているうちに、「このままここで死なすわけにはいかない、親父の従兄弟の獣医に診てもらえば助かるかもしれない、それに、こいつの目はなかなかいい目をしているじゃないか。」と思うようになっていた。
 彼は、ビルのフェンスに垂れ下がっていた古びれた毛布をつかむと、間合いを詰め、相手が噛む隙を与える間もなく、突進し、その犬を抱え上げると一目散に走り出した。


 それから7ヶ月後、その犬はDOILと名付けられ、あの薄暗い路地で、砕けたガラスにまみれて横たわっていた事を感じさせない程すっかり美しい姿に成長し、いつも彼の側にいた。
 最初は仲間達も、死にかけた犬を助けるなんてと馬鹿にしていたが、今では、通りを歩く時などは、DOILを先頭に誇らしげに闊歩するようになっていた。


 ある夏の日、仲間達とソーダを飲みに立ち寄ったダイナーのウィンドウにこんな張り紙を見つけた。"BROOKLYN FAIR-ANTIQUE MARKET,DOG SHOW-PROSPECT PARK 5.AUG.1959"。
 彼は、ソーダのストローをもてあそんでいる仲間の肩を叩きながらこう言った。「DOILをこのショウに出してみたら、どうだろう?」一瞬の沈黙の後、仲間達は一斉にしゃべりだした。「そうだ、俺たちのDOILが負けるわけないよな」


 その八月の日、プロスペクトパークの会場にいた大勢の犬達の中からDOILは見事優勝を勝ち取った。仲間達はもちろん、普段は厳格で仲間達との付き合いも良く思っていなかった父親も、我が事のように喜んでいた。
 翌日の地元紙には誇らしげに見えるDOILの記事が載っていた。今でもその新聞の切り抜きは、丁寧に額に収められ、彼の家の居間に飾られている。


という架空の話に登場するBULLDOG、DOILがモチーフになっています。
BROOKLYN,1959と言えば、写真家、BRUCE DAVIDSONの"BROOKLYN GANG 1959 SAMMER"という写真集が思い浮かびます。当時のBROOKLYNの若者の姿を捉えた写真集ですが、価格が高騰して、手に入れるのが難しくなっています。いつか手に入れたい物の一つです。
その写真集の中の雰囲気を取り入れつつ、創作してみました。


近日、THE RIGHT STUFFに登場します。


"BROOKLYN CHAMPION"
ステンシルTシャツ
Col.WHITE/BLACK TRIM,GRAY/BLACK TRIM
Size.32,34,36,38,40
Dealer.Dempsey Clothing